睡眠障害と睡眠薬

 睡眠薬について

 

 

 "睡眠薬を使い続けると、本当は薬なしでも眠れるのに薬が手放せなくなる、いわゆる「依存症」になってしまうのでは”、また、”薬に対する抵抗力(耐性)がついて、薬の量が増えてしまうのではないか”と、心配する人が多いようです。

 かつての睡眠薬には、たしかにそうした問題がありました。しかし、その後、依存性や耐性を克服した睡眠薬が開発され、現在医師が処方している睡眠薬は、非常に安全性が高く、癖になりにくいものがほとんどです

 

 

睡眠薬の効き方

 睡眠薬がどのように効くのかを説明します。

 人間の脳には、睡眠を司る睡眠中枢、起きている状態を保つ覚醒中枢があり、これらが相互にうまく働き、眠ったり、起きたりという営みが日々行われています。

 このうち覚醒中枢は感情を司る中枢と密接に結びついているため、悩みや不安や心配事などのストレスが加わると感情を司る感情中枢が興奮し、覚醒中枢が刺激されます。さらにその刺激が考えや行動の中枢である大脳皮質に伝わり、覚醒中枢の働きが睡眠中枢に比べて優位になり、睡眠に何らかの障害が現れ、眠れなくなるのです。そこで、覚醒中枢が刺激されないようにして眠らせる役目をするのが睡眠薬です。

 

 

 ■睡眠障害

  「不眠」とは、”睡眠の開始”と”睡眠の維持”において生じる障害のことをいいます。

 

 ○入眠障害・・・

床についてから眠るまでに、通常1時間以上の時間を必要とする場合をいいます。

 

 

 ○途中覚醒・・・

夜中に何度も目が覚めたり、目が覚めたあとは朝まで眠れなくなる場合をいいます。

 

 

 ○熟睡障害・・・

睡眠時間の割には熟眠感が得られず、起きているときに睡眠不足を感じる場合をいいます。  悪夢などを見るケースが多くあります

 

 

 ○早朝覚醒・・・

明け方近くに目が覚めて、そのまま眠れないという場合をいいます。   高齢者やうつ状態の場合に多くみられ、起きている時に強い抑うつ感(気分の落ち込み)を訴えることがあります。

 

 

睡眠薬の分類 1

 睡眠薬でその作用の仕方によって、次の2種類に大別できます

 バルビツレート系(バルビツール酸系)、ブロムワレリル尿素

 

20世紀初頭から使用されている薬で、脳全体を麻痺させる作用をもちます。ただし、呼吸中枢など、生命維持に関係する部位にも作用するため服用量を誤ると生命に危険を及ぼすほか、依存性や耐性があるという問題もあります。 そこで、現在は、入院患者で強い不眠を訴える人以外には、ほとんど処方されなくなりました。  バルビツレート系の欠点を改善した、非バルビツレート系の薬もありますが、これも現在ではあまり使われておりません。

 

 ●ベンゾジアゼピン系

 

感情中枢の興奮だけを鎮め、気分をゆったりさせて睡眠に導くので、「睡眠導入剤」ともいわれます。 一種の精神安定剤ですから、生命維持に関係する部位には影響がなく、誤って大量に服用しても、生命の危険はありません。  現在処方されてるいる睡眠薬の95%はこのタイプですから、かつての睡眠薬のような問題は、まずないと考えてよいでしょう

 

 

睡眠薬の分類 2

 現在、最も多く使われっているのは、”ベンゾジアゼピン系”です。ベンゾアゼピン系の睡眠薬は、薬の効果が現れるまでの時間や効果が続く時間によって、次のように分類されます。

 

 

超短時間作用型

 

すぐに薬の効果が現れて、効果が続く時間が非常に短く、翌日の朝まで残らない特徴があります。主に入眠障害がある人に対して使われます。夜中の2,3時になって服用しても、朝には薬の影響は消えており、目覚めに問題はないという利点もあります。

 

 

 

 

 ○

短時間作用型

 

薬の効果が早く現れます。そのため、熟眠障害がある人によく用いられます。作用が続く時間が比較的短いので、翌日の朝から活動しなくてはならない場合などに適してます。

 

 

 

 

 ○

中間作用型

 

薬の効果が出るまでに比較的時間がかかるものです。薬がある程度ゆっくり効くため、中途覚醒や早朝覚醒が見られる人に勧められます。 私たちは寝ついてから、浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)を繰り返していますが、熟眠障害では、浅い眠りのときに、ちょっとした刺激で目が覚めてしまいます。そこで、一瞬目覚めても、すぐ眠りに入れるよう、効果時間が中間型の薬が処方されます

 

 

 

 

 ○

長時間作用型

 

薬の効果がゆっくり現れ、長い時間効きます。早朝覚醒のある人に効果があります。  早朝覚醒は、神経症やうつ病などでよく起こりますが、この場合には朝まで薬の効果が持続する、長時間型の睡眠薬が適してます。

 

 

 

作用時間

一般名

商品名

超短時間作用型

トリアゾラム

ハルシオン・アサシオン・アスコマーナ・カムリトン・テトラナイト・トリアラム・ネスゲン・ハルラック・パルレオン・フロサイン・ミンザイン・ライトコール など

ゾピクロン

アモバン

短時間作用型

ブロチゾラム

レンドルミン・グットミン・シンベラミン・ゼストロミン・ソレントミン・ノクスタール・ユリモラン・レドルバー・レンデム・ロンフルマン など

中間作用型

ニトラゼパム

ベンザリン・カルスミン・チスボン・ネルナミン・ネルボン・ネルロレン・ノイクロニック・ノイマックス・ヒルスカミン など

フルニトラゼパム

ロヒプノール・サイレース・ビビットエース など

長時間作用型

ハロキサゾラム

ソメリン 

 

 

一般名

商品名

最高血漿中濃度到達時間

血漿中濃度消失半減期

トリアゾラム

ハルシオン

1.2時間

2.9時間

ゾピクロン

アモバン

約0.8時間

約3.9時間

フルラゼパム

インスミン

30分〜1時間

5.9時間

フルニトラゼパム

ロヒプノール・サイレース

30分〜1時間

約7時間

ブロチゾラム

レンドルミン・グットミン

1.5時間

約7時間

ロルメタゼパム

エバミール・ロラメット

1〜2時間

約10時間

塩酸リルマサボン

リスミー

3時間

10.5時間

エスタゾラム

ユーロジン

約5時間

約24時間

 

 

睡眠薬の副作用

 睡眠薬を服用していると、次に挙げるような副作用が現れることがあります。 また、睡眠薬を服用し続けると、「依存症」になる可能性がありますが、これは、医師の指示どおりに、きちんとふくようしていれば、まず心配ありません。自分の判断で勝手に睡眠薬の量をふやしたり、減らさないことが大切です

 

眠気、疲労感

夜飲んだ薬の効果が、翌日まで持ち越されると現れます(持ち越し効果)。そのほか、頭がぼんやりするなどの症状が起こることもあります。

 

 

 

筋肉の弛緩

睡眠薬には、全身の筋肉の緊張をほぐす作用があります。すると、転倒しやすくなり、骨折などを起こす危険性が高くなります。

 

 

 

注意力・集中力、反射運動能力の低下

精神活動や身体活動の機能が低下します。特に細かい作業をしているとミスが出たり、仕事中にけがをすることもあるので、注意が必要です。車の運転もいけません。

 

 

 

記憶障害

特に超短時間作用型、短時間作用型の睡眠薬とアルコールをいっしょにのんだときに顕著に現れます。例えば、”睡眠の途中で目を覚ましたときに、自分のとった行動を何も覚えていない”などというようなことが起こります。

 

 そのほか、睡眠中に何度も呼吸が停止する「睡眠時無呼吸症候群」の人が、睡眠薬を服用すると、よけいに無呼吸を引き起こしやすくなります。このため、睡眠時無呼吸症候群の患者さんには、睡眠薬は処方されません。

 

 

服用を中止するときは

  睡眠薬を服用していて、副作用が現れてきたら、必ず医師にそのことを相談するのが大切です。医師は、患者さんの不眠の状態副作用の程度などをよく検討したうえで”別の睡眠薬に切り替える” ”今飲んでいる薬の量を減らす” ”薬を中止する” など、治療方針を変更します。

 よく眠れるようになったからといって睡眠薬の服用を突然やめると、その反動から、睡眠状態が不安定になり、一睡もできなくなったり、悪い夢ばかり見るなど、薬を飲む前より不眠が強くなることがあります。場合によっては、、”手が震える、落ち着きがなくなる” などの身体症状が現れたり、”強い不安に襲われる” こともあるからです。

 睡眠状況が悪化して、「不眠」となったとき、医師から処方された適正な薬をのみ始めると、だんだん睡眠状況は改善されてきます。  ところが、副作用が出てきたなどの理由で、睡眠薬をやめなければならなくなったり、自分で勝手にやめたりしたとします。 このとき突然、服用を中止すると、「反跳性不眠」といって、薬をのむ前の不眠の状態よりも、さらに睡眠状況が悪化することがあります。反跳性不眠は、特に睡眠薬を長期に服用していた人に見られます

 もちろん、急に服用を中止しても、薬をのむ前と同じ程度の不眠の状態に戻る人もいれば、そのまま薬の服用中と同じ、よい睡眠状況を保つ人もいます。

 

 

服用量の減らし方

 上記のように、睡眠薬の服用をやめる場合は、”徐々に量を減らしていく” ことが大切になります。具体的には、次のような方法で減らしていきます。

 ほぼ満足できる睡眠が得られていた薬の量を「1」とします。

・まず、その3/4の量を2〜4週間続けて服用します。

・その後は、最初の量の1/2の量を2〜4週間のみ続けます。

・さらにその後、2〜4週間は、最初の量の1/4の量を毎日服用します。

・ここまで薬の量を減らしたら、今度は1/4の量を一晩おきにのみます。

 その後は同じ量を、必要に応じて服用するようにします。最終的には、”きょうは少し興奮気味だから、眠りにくい” など、必要がある場合のみ、薬を服用するようにします。

 このような方法で徐々に服用量を減らすと、睡眠状況を悪化させないで、無理なく自然に、」睡眠薬をやめていくことができます。

 ただし、例えば1/2の服用量なら眠れるが、それ以上減らすと眠れない場合は、それが自分に最低限必要な量だと考え、1/2の量で継続していけばよいのです。

 睡眠薬をのむことは、決して悪いわけではありません。やめることばかり考えてあせると、かえって逆効果になります。

 こうした方法は、医師の指示のもとに行うことが大切です。睡眠薬の副作用が出たからといって、自己判断で、急に薬の服用を中止することは、絶対に避けましょう。

 なかには、アルコールを飲めば眠れると考える人もいます。しかしアルコールの催眠効果には個人差があり、かえって動悸などがして眠れなくなるという人もいますし、何より問題なのが、アルコールには強い依存性があることです。一度アルコールに頼るようになると人によっては飲まずに眠れなくなりますし、やがて飲む量も増えてきていきます。いわゆるアルコール中毒(正式には、アルコール依存症)になれば、家庭崩壊にまでつながりかねません。

 それよりも、専門医から処方された睡眠薬を上手に使うほうが、より確実で安全な睡眠確保の方法だと思います。

 

服用中の薬は医師に報告を

 睡眠薬はほかの薬といっしょに服用すると、薬の血中濃度が異常に高まるなど、相互作用が起きて危険な場合があります。睡眠薬を処方して貰う時には、普段服用している薬について、必ず医師に話すようにしてください。

 

 

 

 

 

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